施工不良・瑕疵を無償で直させる~過去の無償改修事例から~

第5回配信 「傾斜マンションの報道誘導」

売主:三井不動産レジデンシャル、施工:三井住友建設で2006年に分譲した「パークシティLaLa横浜」における、いわゆる傾斜マンションの問題について私見を申し上げます。

27年10月に建物の不同沈下が指摘され、その原因として杭の施工不良やデータ偽装が報道されています。確かに杭工事を請け負った旭化成建材は、倫理観の欠如したお粗末な管理体制をさらけ出しましたが、この問題や原因は果たしてそこだけに集約されるのでしょうか。
この問題の原因を検証するにあたり、以下の3つの事柄の検討がされたのかどうかを提示したいと思います。

ひとつは地盤調査の精度です。
建物の杭地業工事の内容を決める際に最初におこなうのは該当敷地の地盤調査になります。 地盤調査の代表格はボーリング調査で、支持地盤がどの深さにどのような土質で広がっているかを確認することになります。このボーリング調査は、たとえ隣接地のボーリングデータが手に入ったとしても計画敷地内で新規におこなうことが義務付けられています。当然、今回も当該敷地においてボーリング調査を行ったことと思いますが敷地内で何カ所のボーリング調査が行われたのでしょうか。

周りに川や山・谷がある地域の場合や地盤図によって支持地盤の傾斜情報がある場合、敷地が広い場合などはボーリング調査は1~2ヶ所で済ますのではなく敷地の四隅と中央の併せて5ヶ所の調査が望まれます。傾斜が不統一な場合は更に増やす必要があります。その5ヶ所のデータがそろえば東西の支持地盤傾斜も南北の支持地盤傾斜も把握できます。それによっていざ工事が進んだ際に杭長が足りないという事態は起きにくくなります。ボーリング調査費用は支持地盤までの距離で決まり、今回のように15m下に支持地盤があるケースでは20万円前後/ヶ所になります。5ヶ所やれば100万円です。 この地盤データをそろえる作業は施工会社である三井住友建設が請け負うことになりますが、その費用負担は事業主である三井不動産レジデンシャルが担うことになります。
今回、その予算を三井不動産がしっかり捻出してこの敷地の根本データを集めることをしたのでしょうか。これがこの傾斜マンション検証の第一歩ではないでしょうか。

ふたつめは杭の選択です。
今回、PC杭をセメントミルク工法で施工したことは報道で知られています。事前ボーリング調査で支持地盤が傾斜していると判明した場合に採用すべき杭の工法だったのでしょうか。支持地盤が深すぎて寸足らずの杭だった場合に施工的にも工期的にも容易に継ぐことができる工法を選ぶべきではなかったのか。該当敷地に最適な工法として今回の工法を採用したのか、別の側面の事情を優先したことはなかったのか。例えば、別の工法である場所打ち杭工法などは杭先端の土砂を目視確認できるため支持層に達しているかどうかは最も安全に確認できます。また予想より杭の長さが必要な場合でも鉄筋を溶接で継ぐことで容易に短期間で対応ができます。杭の選択、これが二つ目の検証でしょう。

最後は元請会社の監督の姿勢です。
今回、やはり報道で三井住友建設の現場監督は最初の1本目しか現場での杭データの確認をしなかったとされています。今回の杭工法は抵抗値データでしか支持層への到達を確認できないにもかかわらず、その場に立会いもしないで監理者としての責任のなさ、極めたりと言えるでしょう。下請まかせという言葉が建設業界では残念ながら多く聞かれますが、三井グループにはその言葉は恥ではないという意識があるのでしょうか。さらに、立場の弱い下請けに責任のすべてを押しつける報道誘導で三井が表舞台から逃れていく姿を見るにつけ、一言私見申し上げたく「施工不良・瑕疵を無償で直させる」シリーズの最新配信に傾斜マンションを加えました。