食えない時代~閉めた会社、創業のこと・父の死・妻のガン発症、死
川添:
大事なポイントですね。 鷲尾さん、お仕事がない時代というのがあったじゃないですか。食えない時代はどんなだったんですか。
鷲尾:
いやあ、ほんとに大変でしたよ(笑)。でもそのときにお客さんに助けられたんですよ。というより、お客さんに育てられたんですよ。今の仕事にパッケージ化したのは自分だけど、これが商品になるな んて思ってなかったんですよ。 前の会社は結局連鎖倒産に近い形でしたからね。息子ということで会社に対して個人保証もしていたため自己破産もしました。だからね、同じ商売で再出発というのは自分の中でものすごく抵抗があってね。
川添:
普通だったら選びませんよね。二度と見たくないというのが普通ではないですか。
鷲尾:
最初はね違うのをやろうとしたんだけど、うまく行かなかったんですよ。就職活動もしましたし。でも、今から言えば幸いにもどこにも採用されずに(笑)。自分でやらざるを得なかったんですよ。そういうときに元のお客さんが、鷲尾さん、これからマンション買おうと思うんだけど、見てもらえる?とか、この土地買おうと思うんだけど、どうかな?とか声をかけてくれるんですよ。自分の元の商売の知識でひとさまに役立てたことは自信になったし、それまではサービスでやっていた建物診断、土地診断って言うのが仕事になるんだって教えてもらった。それからそれをどういった形でやればお金になるのか、サービスとしてお金を払う気になってもらえるかを必死で考えました。最初はお金を取るのはおっかなびっくりでしたよ。自信がなくて。だから、いただく金額の倍以上のサービスは必ず提供しようくらいのことは思ってましたね。結果、請求した金額より余分に払ってもらうというようなことが何度もありました。それだけ感動してくれたんですね。 でもね自分の大きなしこりは、女房の死なんです。会社を閉めた後ね、8ヵ月後に父親が亡くなって、その10ヵ月後に女房をガンで亡くしてるんです。 しばらく、女房の収入が我が家の唯一の収入という時期が続いていたんですよ。女性ながら銀行の課長職でね。そのおかげでなんとかしのげてたというのが実情で・・・
会社を閉めた当時、女房は実家から離婚して戻って来いといわれていたらしいんですよ。でも、私は建志さんとずっと一緒にいるからと言ってくれてたんです。その女房があろうことかガンになるなんて、しかもその病気の女房の収入を当てにしてる自分が情けなくてね。 彼女は医者には働くことも気分転換になるからって言われてるから働くよって言ってくれてね。今でもそれを思い出すとやりきれないですよ。 私の仕事が少し回りだしていい兆候が見え出したところで、彼女がもう働けないみたいと言い出してね。そういう意味では、彼女に仕事が回りだしたところを見せられたというのは救いなんですが。だから、今天職と思える仕事をやれていることはとても幸せなんだけれども、一点曇りがあるとしたらその部分なの。意識的には考えないようにはしてるんだけどね。
あるお客さんとの酒席で、そのことでグチをこぼしたことがあって、そしたら私たちは鷲尾さんのサービスをとても感謝している。だから鷲尾さんからそんなグチを聞くのはとてもつらい、そんなこと言わないでといわれてね。そりゃそうだなと思ったの。それからはそんな風になろう、お客さんの期待通りの自分になろうと。心身ともにね。
川添:
辛い話をありがとうございます。どん底を知っている人の強さ・・というのでしょうか。鷲尾さんには人への慈しみみたいなものを感じますよね。それが強さとなって現れてると言うか・・・。お客さんにとっては鷲尾さんはやはりナントカ戦隊のヒーローなんでしょうね。ヒーローには弱音は似合わないと言ったところなんでしょうか。
鷲尾:
そうねー(笑)、だから、自分が人を助けられると思うといても立ってもいられなくなるから、すごく忙しいんですよ。それが自分の喜びだしね。その結果、週に3,4回は事務所に泊まっちゃうの。自宅まで往復2時間以上かかるから、寝る直前まで仕事できて、起きたらすぐ仕事ができるのがよくてね。
川添:
本当にお仕事を愛してらっしゃいますね。このままもっとそのお話を聞きたいところなんですが、今後の夢とか、したいこととかもお聞きしたいと思っています。
鷲尾:
仕事はおかげさまで切れたことはないのですが、今後ということを考えるとね、一人のお客様と長く付き合えるようなシステムを作りたいですね。たとえば法人や管理組合の顧問とかという形で。反面、私にとって核になる仕事が数多くあれば幸せという思いもあります。仕事を選択して本当に自分しかできない仕事をしていきたいですよ。事務的なことは人に任せたいとも思うのですが、これだけ私の仕事が特殊ですとなかなか人に任せる部分が少なくてね。悩みといえばそのところですか(笑)
家を建てるのは人の夢を実現することでもありますよね。私はお客様も作る側にもそのプロセスを楽しんでほしいんです。そういう意味で、建築の話を進める上での不安や心配は私が矢面に立って取り除くように心がけています。コストを抑えて家を建てるというのもとても意味のあることですが、ぎちぎちの限られた予算の中で家を建てるというのは、実はそのワクワクするプロセスを削ってしまうしまうということで。そのことを踏まえて余裕を持って予算組みができると、現場に立つひともきちんとした仕事ができるし、お客様もさらに夢を広げてもらえるんですよ。 私の夢はそんな風にお客様にも建てる側にもその建築をやって良かったと思えるような体験をしてもらえることかな(笑)
川添 香
KAO Coaching Space/川添社会保険労務士事務所代表
2001年社労務士事務所開設。開業と同時にプロコーチを付け、聴いてもらうことのパワーに感動。人事コンサルタントを経験後コーチに転向する。現在は企業でのワンツーワンコーチングと人材育成研修を中心に活動中。また「幸福な社員が強い組織を作る。社員の幸せは社長が作る」をモットーにエグゼクティブコーチングを行っている。誰もが自分の才能に気づき、十分に発揮できる世の中になるのを願ってやまない。とことん人の可能性を信じるコーチング魂と3人の子供を育てて培った忍耐強さと愛情深さで、じっくりゆっくり広い心で聴くことを大切にしている。
WEB | http://kao-space.com/ |
資格 | 米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)/社会保険労務士/DiSC認定ユーザー/サンタフェNLP/発達心理学協会認定NLPプラクティショナー/ 日本プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー協会認定プロフェッショナル・キャリア・コンサルタント |
所属 | 日本コーチ協会正会員/㈱しごと総研研究員/㈱アメニモ所属リーダー/Joy★Free Cafe De コーチングスタッフ/JWCA(Japan Women’s Coach Association)コアメンバー |