赤外線サーモグラフィ―カメラによる調査

非破壊調査のひとつに、赤外線サーモグラフィーカメラを使用しての調査があります。 このカメラで撮影した画像には、温度情報が色で表現されます。 当協会が普段使用している携帯用のもので、測定温度範囲 は-10℃~150℃ です。

外観からでは不明な断熱欠損、漏水経路の確認、塗膜の浮き等の調査に有効です。具体的な調査事例は以下のようです。それぞれの写真は、同じ部位を撮ったもので、左側が一般の映像で右側が赤外線サーモグラフィ映像です。

断熱欠損

高齢者福祉住宅の内部です。充分な断熱対策が取られていないとの疑問から現状の外部に面する内壁の様子を調査しました。ちなみに撮った時期は夏です。

写真の表面温度分布ですが、右端の棒グラフにその情報があります。棒グラフの上に33.7とありますが、これは画像中で一番高い温度を示し、色は明るい黄色になります。棒グラフの下の27.6は、画像中では一番低い温度となり、暗い青色の部分がそれに当たります。
画像を診ると、下がり壁の一部に黄色が表れており、その部分は他と比べて外気温に影響を受けて温度が高くなっていると判断できます。即ち、その部分の断熱欠損が疑われることになります。

事務所の様子です。天井裏の断熱材の敷き方の状況を確認すべく天井の撮影をしてみました。

天井面に、温度が高い場所があります。後に確認したところ、断熱材は敷いてありましたが、その敷き方が雑で浮いている箇所がありました。

漏水・雨漏り

工場の内壁の様子です。ALC版に漏水跡があったため、雨水の侵入ルートを探るべく、赤外線サーモグラフィ撮影をしました。

明り取りの窓下ラインは、ALC版の水平継ぎ手になります。そのラインから下のALC版に、縦に幾筋もの温度が低い箇所があります。この映像から、漏水はALC版の水平継ぎ手からと判断できます。

あるマンションの駐輪場で、天井に漏水跡がみられます。

壁と天井の温度分布状況を診ると、漏水で温度が低くなっている箇所が確認できます。雨水の侵入ルートは2ヶ所あることが分かります。

防水層の浮き

屋上の床面です。経年劣化を調査しています。

温度が高くなっている箇所は中に空気層があり、ウレタン塗膜防水層に浮きが見られます。打音調査でも、浮きが確認できた場所になります。見ただけでは分からない防水塗膜の浮き範囲が特定出来ました。

肉眼でも防水層に膨らみが見られる箇所です。

膨らみ部分は空気層があるため、温度が高くなっていることがよくわかる映像です。

塗装塗膜の浮き

マンションの共用廊下天井周りの様子です。

一見、異常無いように見える天井ですが、部分的に温度が高い箇所がいくつも確認できます。この部分は、天井の塗装が浮いていることが分かります。

モルタル浮き

築30年超の鉄筋コンクリート造の寮になります。屋上の塔屋壁の様子を検証しました。

部分的に、壁の温度が高い箇所があります。鉄筋コンクリートにモルタルを塗ってありますが、そのモルタルが部分的に浮いていることが分かりました。

工場兼事務所ビルです。モルタルが塗られている面を検証しました。

温度分布の状況を診ると、モルタルが各所で浮いていることが確認できます。