KOAコーチの「経営者に聞く」

大事なことは公明正大にやること。正しいことは正しくしたいんですよ。だから紹介料はとりません。~今の仕事は天職~

鷲尾:

大事なことは公明正大にやるってことななの。そこで管理会社に任せていたらこんなに余分なお金がかかったんだなって分かるし、私の建築診断、見積診断などの。コンペには管理会社の推薦業者も必ず入れてもらってね。でもそういう業者はいつもダントツで高い金額すべての費用を加算しても管理会社の提示した金額よりトータルで全然安く済むし。何よりも自分たちが納得して発注できているわけですね。

川添:

コーチングみたいですね。主体はあくまでお客さまだと。

鷲尾:

まあ、そこまで考えがあってのことではないのだけど、今までは大規模修繕の発注の仕方に透明性がなかったんですよ。管理会社でやるときには必ずキックバックがあるし。だから当然金額が高くなるんです。だから、私から業者を紹介する場合にも紹介料はいただかないんです。

川添:

はあ、普通はありますよね。

鷲尾:

だってそれやっちゃうと、自分の紹介したところに決めたくなるでしょう。公明正大さが崩れてしまう。

川添:

正義感を感じますね。今までのエピソードの根底に流れるものではありませんか。公明正大さとか。

鷲尾:

正義感はね、自分の中に少しあるかなと思ってますね。だから許せない。

川添:

ほう、何を許せないんですか?

鷲尾:

建築会社だったらこういうことはやれよ、ということですね。建築というのは金額が大きいので、もとも建築に興味がない人間も入ってくるわけですよ。銀行上がりとか、不動産関係とか。

川添:

金儲けの目的としてですね。

鷲尾:

そうそう。元の単体が大きいからマージン3%としてもそういう人間にはとても美味しいところなの。そういう人たちは、技術を知ってる人間なら守っているライン、たとえばこんなことをやったら建物がおかしくなるというところを平気でぐじゅぐじゅにしてしまう。それで不利益を被るのは所有者のほうでしょ。だから、ありえないような工事を見ると、なんでって気持になる。技術って1+1=2しかない世界だから、もともとそんなに悪いやつはいなはずなのよ。それをやらせちゃうんだね。だからね、そういうのを見ると許せない。初めからちゃんとやりゃあいいじゃないって思っちゃうんですよ。

川添:

正しいものを正しくやってくれということなんですね。子ども時代のヒーローを思い出しますね。昔からそうだったんですか。

鷲尾:

絶えず自分の考えで自分の行動をするって言うのは、今だからではなくて、あの頃ずっとあったなあ。中学の頃だけど、テレビである学校を取り上げてスタジオに生徒を呼んでアンケート調査をやるというのがあってね、ウチの中学が選ばれてやるってことがあったの。ところがスタジオには半分の人数しか入れなくて、抽選しようということがあってね。先生が、まあそういう人はいないと思うけど、行きたくない人っていうのはいないかな?って手を挙げさせたんだ。そのときに手を挙げたのが全学年で一人。オレだけだったんだよ(笑) なんで行きたくないのって聞かれて、なんだかねぇ、テレビの前にシャシャリ出るなんて恥ずかしさがあったし、結構一人で何かやっていたいというところはあるね。

川添:

一匹狼?

鷲尾:

といっても、変わり者ではないですよ。友達もたくさんいるし(笑)自分で決めるってことが大事なの。決められたことがおかしければそれに乗らないし、自分で納得すればOK。たとえばね、お金もらわなくても仕事することがあるんですよ。ある若夫婦に依頼されたことがあって、新築なんですが、雨漏りするんですよ。それでその夫婦が業者と一年くらい交渉していてね。この夫婦、ローンを目いっぱい組んでがんばってるんだなと思ったら交渉したサポートフィーなんか請求できない気持になって、フィーを請求しなかった。でも、私が間に入って、ピリピリした空気の中で、業者に天井も全部はがさせて直すところをその夫婦は見てるでしょ。そうするとお客さんのほうからお金を払いたいって言ってくれるんですよ。お客さんはまた堂々と次回も私に頼めるからお金とってくれって。

それから、HPから問い合わせがあるお客さんっていろんなことを聞いてくるんですよ。建築診断協会というネーミングが公共機関のイメージなんでしょうね。実際ネット関係で来る問い合わせで仕事の成約率って10分の1くらいなんですよ。今、仕事でものすごく忙しくて時間がないんだけど、電話の向こうで非常に困っているのが分かると、もう助けてあげたくなっちゃってね。ボランティア精神ですよ。とりあえず、あらん限りのことを調べてあげて教えてあげるんですよ。気がつくと30分とか1時間とかかかってる。

川添:

必ずしも仕事につながるというわけではないですよね。

鷲尾:

そう。仕事になるかと思えばならないんだけどね、それでもいいかなと思うの。自分の中には尽くす喜びって言うのがちょっとあるわけ。

川添:

それが鷲尾さんの推進力となっていますね。

鷲尾:

自分だけしかできない仕事をしたいんですね。自分だったらきっと分かるんじゃないか、自分だったら助けてあげられるんじゃないかという仕事に時間を使いたい。だからね、私じゃなくてもできる仕事は全部業者に紹介してるんですよ。紹介料ももらわずに。

川添:

鷲尾さんにとっての仕事の価値はお金だけではないということですよね。助けるとか、正しくないことを正すとか・・

鷲尾:

その仕事で成功したかどうかというのは3つのポイントあるというのをある人に教えてもらったんだよね。まず、その仕事が好きなこと。それからその仕事で食えること。それからその仕事をすることで人から評価されること。

まさしくね、仕事とはこうありたいと思うし、それを目指しているわけです。

川添:

鷲尾さんの天職なんですね。

鷲尾:

今のほうがずっと鷲尾さんらしいって言われますよ。「お客さんのために」という姿勢をずっと貫いてそれが仕事になっていて、自分は嬉しいし、なおかつお金までもらって、評価もしてもらえて、それからそういうお客さんは紹介もしてくれるし、何かあったときはまたリピーターとして依頼してくれる。そういうところが喜びで、睡眠時間削っても休みがなくても、これを仕上げてもって行ったらきっと喜んでくれるだろうと思うと、やれるわけですよ。