第2回配信 「図面と違う防水施工」
依頼の発端は、地下ピットの排水不良でした。
建物の地下部分に、地下湧水を貯めてポンプで排水する設備がありました。そのポンプが設置されている排水ピットの深さが、図面より15cmほど浅く作られていたため地下全体に湧水があふれていても、ポンプが稼働域に達しないで動かなかったのです。当然、地下室はいつも湧水が必要以上に溜まりっぱなしの状態で、電気設備の故障が起きて初めて排水異常のことがわかったようでした。
しかし、この建物の瑕疵はそれで終わりませんでした。
地下のポンプ設置も図面の指示と違う施工がされていましたが、他にも屋上の各所に図面の指示とは明らかに違う防水や仕上げの施工がされていました。そのために、築3年で防水層は傷んでしまい、滞留水の存在もありました。図面はしっかりとしたものだったのですが、現場監督の力量がそれに付いていけてなかった例といえます。
事例1
現況 | 屋上の塩ビシート防水立ち上がりの各所が、ゆがみが生じ傷んでいます。 |
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問題点 | 図面で指示されている、塩ビシート防水の立ち上がり部分とシンダーコンクリート接合面の伸縮目地が設けられていません。 |
解説 | シンダーコンクリートが地震などで動いた際に、パラペット立ち上がり面の塩ビシート防水を傷めたようです。 図面では、それを見越して緩衝帯としての伸縮目地をエラスタイトという材料指定までして指示していました。目地幅は25mmとしてあります。 その伸縮目地が設営されていないため、振動などで動いたコンクリートが直に塩ビシート防水に当たっています。 塩ビシートは裂け易い材質で、このような応力が加わった場合、破断すると即漏水します。 |
改修内容 | 既存の立ち上がり部分の防水を切除し、新たに屋上全面にウレタン防水を施してもらいました。 その防水仕様は、10年の耐用年数があるものにし、今回の工事後の10年保証を出してもらいました。 |
事例2
現況 | 3階バルコニー上部にあたる庇(ひさし)屋根に、防水保護のコンクリートが打たれていなく、防水層で仕上がっています。水はけが悪く、滞留水があります。 |
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問題点 | 図面では保護コンクリートを打ち、排水ドレンに向かって水勾配をつけるようになっています。 |
解説 | 屋上スラブ面に水勾配が付いていないため、防水層に雨水が滞留しています。 本来、打たれた防水保護のコンクリートのよって、ドレンまでの水勾配が出来るようになるはずでしたが、肝心のコンクリートが打たれていません。 これでは、滞留水が発生するのは避けられません。 |
改修内容 | 金網メッシュを既存防水に接着させ、モルタルで勾配直し後にウレタン防水をかけました。 |
事例3
現況 | 外壁に付いている電気のプレートから錆び汁が発生しています。 ボックス内に、雨水が入っています。 |
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問題点 | プレートな完全防水型ではなく、ボックス内はビニールテープが巻かれた結線があり、漏電リスクがあります。 |
解説 | 外部の中継ボックスであれば、完全防水型のタイプを使用すべきです。 ボックス内は、雨水で満タンの状態となっています。 |
改修内容 | 完全防水タイプのプレートに変更してもらいました。 |
事例4
現況 | 地下ピットの床に湧水が溜まっています。 |
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問題点 | 排水ポンプを設置している釜場の深さが15cmしかなく、ポンプ起動が遅れています。 |
解説 | 使用されているのは、寺田ポンプ製作所の「PGA-250T」でした。 起動水位は44cmのポンプです。 当初の図面では、深さ40cmの釜場を設置することになっていました。 ピット内の湿気で、1階出入り口ハッチの木枠にカビが発生し、腐食が始まっています。 |
改修内容 | 釜場と地下ピットとの底位差を増やすために、釜場以外の地下ピット床をコンクリートで10cm上げることにしました。その上で、起動フロート位置を下げました。 |
事例5
現況 | 外壁の石貼りの一部が浮いています。 |
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問題点 | 石貼りのうち落下した箇所があります。 ひびが入っている石もあります。 |
解説 | モルタル貼り工法の場合、陶片が陽に当たれば膨張し、冷えれば収縮を繰り返すことにより接着面の疲労を招きます。 打診音で診るかぎり、浮きが広範囲に存在しています。 引張検査で、0.4N/m㎡以上の付着力があるかどうかを調べる方法もあります。 |
改修内容 | 打診調査で浮いている石部分を取り外し、モルタル接着をやめ有機性接着剤で貼りなおしてもらいました。 |
事例6
現況 | 地下ピット内の躯体のピーコン跡(型枠施工時の跡)から、錆び汁が出ています。 |
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問題点 | ピーコン跡をモルタルで埋めていません。 |
解説 | 本来モルタル充填すべきピーコン跡をそのままにしているため、錆びが発生しています。 |
改修内容 | ピーコン金具に錆び止め塗料を塗った後に、モルタル充填してもらいました。 |
事例7
現況 | 地下ピット内の外部貫通部から汚泥が出ています。 |
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問題点 | 貫通部のモルタル充填がされていません。 |
解説 | 外部に面する貫通部にモルタル充填がされていないため、汚泥が入り込んでいます。 |
改修内容 | 汚泥撤去後に、モルタル充填してもらいました。 |