【月間トピックス】2025年5月号

都内の賃貸ビルの診断依頼を受け、屋上から外壁周りを診たところ、今回の事例にぶつかりました。ひとつは経年劣化診断で、もうひとつは施工診断でした。
この欄では、シーリング検証にあたってのポイントをお知らせします。

上の写真は、築39年の鉄筋コンクリート造の建物外壁です。
新築以来、過去に1度足場を架けて外壁改修を行っています。経年劣化診断の依頼を受けて、シーリング材の硬化具合を検証すべく、外壁の誘発目地シールを採取しようとカッターで切断して取り出したところです。

指摘のポイントは2つあります。ひとつは新築時の施工にあり、もうひとつは改修時の施工にあります。まず、新築時においての指摘です。該当箇所の鉄筋コンクリート造の誘発目地は、挙動:ムーブメントによる影響がない目地ですから「ノンワーキングジョイント」となります。ノンワーキングジョイントの場合は、目地底に水が浸入した場合に水みちとなる2面接着より、シーリング材が目地底に接している3面接着が有効とされています。しかし写真で明らかにように、目地底にバックアップ材が装着された2面接着で施工され、しかもその材厚は、規定厚10mmに及ばない5mmしかありませんでした。不要なバックアップ材を装着させたことで、規定厚に足りない厚みしかシーリング材を充填することが出来なかったといえます。


次の写真は、外壁塗装を終えたばかりの鉄筋コンクリート造の建物です。施工にいろいろと不安を覚えた施主が、引き渡し・最終金支払いを保留して、我々に施工診断を依頼した物件です。

外壁の打継目地のシールを触診したところ、打ち替え後1ヶ月しかたっていないのに、弾力があまりないことから、既存シーリング材を残して、その上から薄くシーリングを塗り重ねただけではないかとあたりをつけ、切り取ってみました。案の定、目地の奥側に経年劣化で硬化した旧シーリング材が残っており(写真の黄色のシーリング部分)、表層だけ2mmにも満たない厚みで、今回施工したシーリング材(写真の白色のシーリング部分)が塗られていました。

この施工会社は施主に提示した見積書で、既存シーリング材の撤去後に、新たにシーリングを打つと謳っていました。見積書には、その撤去や処分費用が計上されていましたが、実際には既存シーリング材は残置されたままでした。2mmしか膜厚がない新規のシーリング材は、早々に硬化してしまい、防水としての効果はごく短い期間しか期待できないでしょう。